Sansanの事業を推進する分析データ統合インフラにおけるtrocco®️の役割

法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」をはじめ、「Bill One」「Seminar One」等の新規事業展開が進むSansan社をお迎えし、事業の分析データ統合インフラとしていかにtrocco®を活用し、新規事業への環境適応など様々な課題を解決されていったのか、お話しを伺います。導入効果へのQ&Aや今後の事業クロス分析への展望を交えながら進行しますが、特に、新規事業の企画から営業・マーケティング展開を担う方には必見のセッションです。

セッションレポート

事業の拡大と、環境の変化にあわせたデータ分析基盤を構築する。Sansanが描くマーケ戦略とtrocco®️の役割

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「出会いからイノベーションを生み出す」をMissionに掲げているSansan株式会社(以下、Sansan)では、名刺管理サービス「Sansan」や個人向け名刺アプリ「Eight」をはじめ、最近では請求書受領サービスの「Bill One」といった新規サービスを展開しています。
また、事業の初期フェーズよりデータ分析基盤の構築が進められ、サービスの成熟度合いや市場環境の変化に応じて進化を続けてきました。
今回のセッションでは、事業の分析データ統合インフラとして、いかにtrocco®を活用し、新規事業への環境適応など様々な課題を解決されていったのか、お話を伺いました。

写真は右から
松澤 遼 氏 (Sansan株式会社 ビジネス統括本部 マーケティング部 リードストラテジーグループ)
竹内 香澄 氏 (Sansan株式会社 ビジネス統括本部 マーケティング部 リードストラテジーグループ マネジャー)
中村 祐太 (株式会社primeNumber カスタマーサクセス本部 Head of Customer Success)

Sansanの「The Model」型の組織とマーケティング戦略

Sansanでは「The Model」と呼ばれる、各部門の分業体制によるフレームワークに則ってBtoBビジネスを進めています。ビジネス統括本部の中にマーケティング部やインサイドセールスを担うセールスディベロップメント部、営業部、そしてカスタマーサクセス部が置かれており、いわゆる「The Model」型の組織構造であることが特徴です。

マーケティング部のストラテジーグループでは、マーケティングオペレーション全体の統括として、各種数値の計測やリード基盤を整備する業務を手掛けていると、竹内氏は説明します。

「簡単にマーケティング部の施策の流れをお話しします。テレビCMといった認知施策からサービスの理解促進を狙う施策を経て、刈り取り広告や展示会、セミナーによってコンバージョンを獲得、その後、導入意向度が高いホットリードをインサイドセールスにパスする、というフローです。

リードの獲得からナーチャリングまでがマーケティング部の業務範囲となっており、事業の拡大に伴ってテクノロジースタックを各フローで整えてきました。今回のセッションでは、Sansanのマーケティングにおけるデータ分析基盤が、どのように進化してきたか、ご紹介させていただきます」(竹内氏)

自社サービスの拡大と環境の変化にあわせて進化するデータ分析基盤

Sansanのデータ分析基盤の進化は、大きく3つの時期に分かれます。

・第一期(2018年頃まで):単一サービス「Sansan(クラウド名刺管理サービス)」の拡大に尽力。テレビCMによる認知施策から、展示会やセミナーなどのリード獲得施策を実施

・第二期(2019年〜2020年):新規リードの獲得が苦しくなり、獲得済みリードから売り上げを立てることに注力。データの計測ルールやリード基盤の構築、リードナーチャリングに注力し、スタックを変化させていった。また、コロナ禍が始まり、事業全体でも方針転換を迫られる

・第三期(2021年〜現在):新規事業の急成長に伴い、マルチプロダクト化が進んだ。1つの統括本部で複数のプロダクトの拡販を進めるために、データ分析基盤の構築を推進

初期フェーズより、「The Model」の単線ファネル型の効果測定を実現

セッションでは、第一期から第三期までそれぞれのデータ活用の状況について順に紹介されました。まず第一期の初期アーキテクチャは、竹内氏の言葉を借りると「とてもシンプル」だったといいます。

「MAのAdobe Marketo Engage(以下、マルケト)、CRMのSalesforce(以下、セールスフォース)を中心に基盤を構築しており、Web広告にはアドエビスを、Webサイト分析にはGoogleアナリティクスを利用していました。

アドエビスではWebサイトのCV件数や広告接触の効果を計測しており、広告を出稿していたYahoo!、Google、Facebookなど、それぞれの媒体でどのような効果を生み出しているかを検証、計測していました。アドエビスとマルケトを連携させることによって、マルケト内のリード情報に、流入元の広告媒体に関する情報が付与されます。

また、マルケトはセールスフォースと人物情報を双方向で同期させていました。マーケティング部ではマルケトを、インサイドセールスではセールスフォースを操作しているため、データが常に同期されている状態が望ましかったのです。BtoB SaaSの基本である『The Model』の単線ファネル型の効果測定はこの時点で実現できていました」(竹内氏)

限定的ながらもデータの可視化を実現。同時に自社サービスで企業と個人のデータを統合する

第二期は、計測ルールやリード基盤を整備し、見込み顧客育成に注力した時期でした。第一期と第二期を分けている理由、それは第一期のアーキテクチャではできなかったマーケティング施策を第二期で実現できたことが挙げられます。竹内氏は第二期のタイミングでSansan社に入社しており、当時の施策を振り返りました。

「第一期では、施策単位の効果測定はできていたのですが、マーケティング部全体の受注貢献を可視化する指標の定義やデータ整備が充分ではありませんでした。また、施策効果の計測についても、MAは人物単位でリード情報を管理するため、企業単位の評価ができていなかったことも課題です」(竹内氏)

マーケティング部の事業貢献については、オペレーションやルールの整備、計測条件の定義を進めることで解決しています。同時期に導入されたBIツールがTableauであり、データポータルの活用も進んでいます。

セールスフォースのデータをSQL Serverに取り込み、Tableauに繋いで事業部全体で可視化することに成功しました。ただ、ボトルネックの特定には成功したものの、より深堀った原因の特定や、指標や用語の定義が事業部間によってばらつきがあること、重要なメール施策のデータだけはマルケトでしか確認できないなど、課題はまだ残っていたそうです。

また、人物単位から企業単位への評価に移行させることは簡単なことではなかったといいます。一般的には、会社名やドメイン情報でグループ化し、集計する方法があるものの、会社名による集計は表記揺れや社名変更に対応できず、そもそも案件情報がドメイン情報を持っているケースは多くありません。試行錯誤の結果、会社名とドメイン情報で企業単位の情報を評価しようとしても、充分な精度が見込めないと判断されたのです。

「企業単位の評価方法に悩んでいたタイミングで、Sansanに実装された新機能が『Sansan Data Hub』です。法人番号や帝国データバンクの企業コードといった複数の情報をもとに企業の同一判定を行い、そのデータを返すことでデータの統合、名寄せを実現できます。

自社で導入した結果、セールスフォース内で企業情報が正しく紐付けられている人物データ数がおよそ3倍になりました。これは、人物データの8割弱が企業情報に紐付いている状態です。これによって、人物単位ではなく企業単位で評価していく基盤に進化しました」(竹内氏)

より一層深いデータ分析を実現するため、自社でデータ分析基盤の構築を決定

第二期では、Sansan Data Hubの導入でリード獲得とマーケット分析において、人物と企業が結びつくようになりました。さらに、セールスフォースのデータをTableauで確認できるようになったことで、現場の担当者それぞれが統一的な指標を参照できる環境が実現。結果として、セールスフォースにさまざまなデータを蓄積していこうという機運が高まった状態で第三期へ移行しました。

2021年はコロナ禍で展示会に代表されるオフライン施策が停滞した一方、ウェビナーやオンライン展示会によってオンライン経由の流入が増加した時期です。第三期のタイミングで入社した松澤氏より、当時の取り組みをお話しいただきました。

「事業全体を俯瞰すると、リード数は増えているものの実態のある商談は生まれておらず、数字と事業の実態が乖離してきたタイミングでした。そこで、より一層データを深くまで分析する必要があると感じ、データ分析基盤を自前で構え、そして分析していくためのツールを導入することになりました。

ツールの検討で最も重視されたポイントは、エンジニアなしでデータ分析基盤を立ち上げられることです。具体的には、非エンジニアにとって分かりやすく、手離れがよく、そして弊社スタックと適合している(現在活用しているツールに対応したコネクタが用意されている)ことが重要でした。

検討を重ねた結果、アーキテクチャにはtrocco®とBigQueryを導入することになりました」(松澤氏)

メール、イベント、そしてインサイドセールスに貢献するデータ分析基盤の活用例

trocco®を導入し、自社で構築したデータ分析基盤は具体的にどのようにデータ分析業務に活かされたのでしょうか。セッションでは、大きく3つの取り組みが紹介されました。

・データ活用①:メール ✕ リード属性で分析

メール配信は、Sansanにとって特に重要視されている施策のひとつです。現在、週に2, 3本のメールマガジンが配信をされており、セミナー案内や新しいサービスのご紹介、ヒットコンテンツ、ホワイトペーパーなど、さまざまなコンテンツが用意されています。

「マルケトやHubSpotの管理画面からでも、メールの開封率、クリック率という指標は確認できていました。しかしそのデータの解像度は粗く、コンテンツがよかったのか、配信リストがよかったのか、より深くまで汲み取れなかったのです。

自前でデータ分析基盤を整えた現在では、エリア別や役職者別など、マーケティング部のメール部隊が一つひとつのメールを深くまで分析できるようになりました」(松澤氏)

・データ活用②:イベント・セッションの分析

Sansanでは、大型のビジネスカンファレンスを年に2, 3回の頻度で自社開催しています。コロナ禍の現在はオンライン開催にシフトしたため、より詳細の視聴データまで取得できるようになりました。

「以前のアーキテクチャでは、今回のイベントでは何名集客でき、セッションへの反応はよかったかどうか、くらいの粒度感でしか分析できませんでした。現在では、イベント全体を俯瞰し、開催前後でどのようなマーケティング成果があったのか可視化できるようになっています。

それに伴い、イベント体験の作り方にも変化が表れました。データを分析すると、特に午後は視聴者数が減っていくことが分かったため、最近のイベントはできるだけ早く切り上げ、セッションの密度をより濃くしていく方針にシフトしています」(松澤氏)

・データ活用③:リード消化状況の分析

「2020年5月提供開始の『Bill One』をはじめ、マルチプロダクト化が進む中で『どのインサイドセールス組織が、どのリードに対応しているのか』をモニタリングし、ルールを策定していく必要が出てきました。

例えば、グループAが担当しているリードの消化率があまり高くなければ、別のグループに割り振るといったデータドリブンな意思決定が、社内オペレーションにおいても実現できるようになっています」(松澤氏)

データ分析基盤の構築に必要なスキルと、コミュニケーションの大切さ

セッション最後に、進行の中村よりこれまでの内容を受けての質疑応答の時間が設けられました。まず最初の質問は、マーケティング部の採用方法について。第一期から現在の第三期まで、どのような流れで採用が進められたのか、竹内氏に回答いただきました。

「現場の需要にあわせて必要なスキルセットを洗い出し、そのスキルセットを持ったメンバーを採用していくイメージです。そのために、人事にはこまめに事業状況と、どのような人材を採用してほしいか、密にコミュニケーションをとっています。

私が入社する前の第1期は、施策全体を設計するメイン担当者が1名、データクレンジングといった業務を担当するアシスタントが1名の、合計2名体制でした。

第2期は、私とデータに強いアナリストが1名、オペレーションを担当するアシスタントメンバーが2名の合計4名体制でした。

第3期は私と松澤に加え、Webやセールスフォースに強いメンバーや、他の業務を兼任しながらデータ分析基盤の業務を行う中心的な4名と、オペレーションやデータクレンジングを担当するアシスタント4名の合計8名になっています」(竹内氏)

続いて、第二期、第三期それぞれで最も苦労したこと、そして身につけておきたいスキルについて竹内氏と松澤氏の両名に伺いました。

「第二期における私の役割は、ルールづくりにあったかなと思います。『どんなルールが正しいのか』『次にPDCAを回すためにはどんなルールが必要か』と悩みましたね。

また、私自身はいわゆるテクニカルツールの扱いに長けていないので、やりたい施策があっても私のスキルでは実現できないこともあり……。チームでコミュニケーションを重ねる中で、自分が持つスキルをシェアし、互いの成長に合わせて役割分担していくアプローチが大事だと思います」(竹内氏)

「第三期の難しさは、マーケターとのコミュニケーションかなと思っています。僕自身、エンジニアリング寄りのバックグラウンドということもあり、リテラシーの差によるコミュニケーションでは苦労しています。

スキルとしてはSQLやPythonを扱うことはできますが、扱うスキルだけでなく、それをマーケターにちゃんと解釈できるものとして伝えていくスキルは重要かなと感じました」(松澤氏)

事業のフェーズにあわせてデータ分析基盤やマーケティング部の組織を構築してきたSansan社。セッションのまとめとして、今後取り組んでいきたい施策を3つお話いただきました。

「より一層深く分析を進めていくため、現状の属性データを中心とした分析に加え、行動データを含めて分析をしていくことがまず1つ。2つ目が、フェーズが異なる複数プロダクトにおいて、データドリブンな意思決定をもとにそれぞれに投資を行い、ROIを最大化していくこと。そして最後に、trocco®を用いてより多くの外部データを取り込み、プロダクト価値の向上に活用していきたいですね」(松澤氏)

登壇者

竹内 香澄
竹内 香澄 氏
Sansan株式会社
ビジネス統括本部 マーケティング部 リードストラテジーグループマネジャー
データベース関連のサービス提供会社にて、検索エンジンやレコメンドエンジンの法人営業および事業開発に従事。
その後、toC向けエンタテインメントアプリのプランナー・プロダクトマネジャー・分析チームを経て、2019年3月にSansan株式会社へジョイン。
現在は働き方を変えるDXサービス「Sansan」「Bill One」などの法人向けサービスにおいてCRM・MAの運用責任者を担当し、ビジネスを推進するための顧客基盤構築と向き合っている。
松澤 遼
松澤 遼 氏
Sansan株式会社
ビジネス統括本部 マーケティング部 リードストラテジーグループ
九州大学大学院修了。国内大手メーカーに新卒入社。
データアナリストとして、CRM基盤構築や顧客データ分析を通じて事業の課題解決をリードしたのち、2021年にSansan株式会社にジョイン。現在はマーケティング施策やリードの分析を担当し、データドリブン文化の構築に取り組んでいる。
中村 祐太
中村 祐太
株式会社primeNumber
カスタマーサクセス本部 Head of Customer Success
早稲田大学卒業後、新卒入社した独立系SIer企業にて製造業向けPLMパッケージ導入のプロジェクトリーダーに従事。その後、2020年にカスタマーサクセス立ち上げメンバとして株式会社primeNumberに参画。以来、trocco®︎ユーザーへのオンボーディング支援、活用促進のためのプラン提案等の顧客対応からCS業務の最適化まで幅広い業務を担当。現在はHoCSとしてチームマネジメントや顧客の声を開発チームへフィードバックすることを率先しプロダクト推進も牽引している。

企業情報

Sansan株式会社

https://jp.corp-sansan.com/
設立:2007年6月11日
資本金:63億7,600万円(2021年11月30日)
事業内容:働き方を変えるDXサービスの企画・開発・販売

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